2022.7.30

 

これは2年前の秋に見つかったティアラです。「見つかった」というより「見つけた」という方がふさわしい出会いでした。

「なにか珍しい、興味そそられるものが見たいナ」と思う時にお邪魔するその骨董屋さんは、敷居が高いのかそうでないのか、よく解らない所です。品揃えは、考古学的発掘物、古いコイン、エジプト、ローマ時代の柱の断片など、完全に男性好みながら、私は「何に使われたのか?それでも心惹かれる」という類のモノとの出会いを求めて此処に出かけます。店主は50代前半、10代はじめに学芸員の母親と共にローマに住み、以来、古いものに憑かれた筋金入りです。人柄もマナーも大変よく、居心地良いため、ついつい長居する1軒です。その日もいつのように椅子に座り、コーヒーを頂きながら薄暗い店内を見回すと、後ろのカーテンポールの端に無造作に掛けてある存在に目が止まりました。見せて頂くとホコリを被った古いティアラで、揺れる中央の百合の花、麦の穂、葡萄の葉の飾り、、、作りやスタイル、経年変化などから見て明らかにフランスの19世紀中期、ナポレオン三世時代のものです。早速、買い求め家に帰り丁寧にホコリを除くと、往年の美しさが蘇りました。それを眺め、やれやれ向こう一週間「卵料理が続くナ(こちらで節約する時に使う表現です)、、、」。それでも満腹感を味わえる出会いでした。

2022.7.17

8月夏季休館のお知らせ

8月:夏季休館 8月1日(月)〜9月1日(木)
※9月2日(金)〜OPEN

2022.7.15

皆様、コンニチハ!

夏至を過ぎた今も此処、デンマークは遅くまで明るい白夜の季節です。世界の様々な状況により、私の移動も制約されています。結果、久しぶりの年間を通じたこちらでの滞在で、新しい発見や驚きや感動もありました。そんな中から、モノや暮らしなどを取り上げ、「デンマーク便り」としてお届けしたいと思います。

上の写真は、最近手に入った刺繍部分幅5㎝のサンプラーです。電話連絡をくれ、これを私に見せてくれたのは、長い付き合いのある骨董屋さんで、「大変細かい仕事で今まで見たこともないモノ」という触れ込みでした。

確かに私もこの手のサンプラーは見たことがありません。布を縫い縮めた畝の上を掬い刺繍したスモッキング技法の古いものです。細い絹糸で精緻に刺された23種の文様がポジ、ネガ(背景を刺して模様を浮き出す)で並んでいます。高価な絹糸で、こんなに細かい仕事が出来たのは、時間を忘れて手仕事に集中出来た裕福で、手芸自慢の女性でしょう。

19世紀初~中期のデンマークで作られた、刺繍部分サイズ:幅5×長さ32.5cmの小片です。見ているだけで勇気、元気の出る、こんなレアなものを、私のもとに繋いでくれた骨董屋さんに感謝し、実物を皆さんにお見せ出来る前に、少しでも早く写真でご紹介したいと思いました。