2022.7.30

 

これは2年前の秋に見つかったティアラです。「見つかった」というより「見つけた」という方がふさわしい出会いでした。

「なにか珍しい、興味そそられるものが見たいナ」と思う時にお邪魔するその骨董屋さんは、敷居が高いのかそうでないのか、よく解らない所です。品揃えは、考古学的発掘物、古いコイン、エジプト、ローマ時代の柱の断片など、完全に男性好みながら、私は「何に使われたのか?それでも心惹かれる」という類のモノとの出会いを求めて此処に出かけます。店主は50代前半、10代はじめに学芸員の母親と共にローマに住み、以来、古いものに憑かれた筋金入りです。人柄もマナーも大変よく、居心地良いため、ついつい長居する1軒です。その日もいつのように椅子に座り、コーヒーを頂きながら薄暗い店内を見回すと、後ろのカーテンポールの端に無造作に掛けてある存在に目が止まりました。見せて頂くとホコリを被った古いティアラで、揺れる中央の百合の花、麦の穂、葡萄の葉の飾り、、、作りやスタイル、経年変化などから見て明らかにフランスの19世紀中期、ナポレオン三世時代のものです。早速、買い求め家に帰り丁寧にホコリを除くと、往年の美しさが蘇りました。それを眺め、やれやれ向こう一週間「卵料理が続くナ(こちらで節約する時に使う表現です)、、、」。それでも満腹感を味わえる出会いでした。