支払いを済ませ、少し離れた駐車場まで夫と二人で運ぶ道すがら、多くの人達が鳥籠に目を止め、 「素晴らしいネ」、「おめでとう」などなど様々な反応を返してくれます。その中の一人が、「これは素敵なFir de fer(フィル・ド・フェール=仏語で鉄の糸の意)だネ」と鳥籠について教えてくれたのです。言葉は聞いた事はありましたが、自分の手の中の、目の前のものがFir de ferだとは知りませんでした。
「Fir de fer」、、、後日調べると、フランスで19世紀、針金の束とペンチ等簡単な道具を携え村から村を旅し、市で実演販売をしていた。それが、フランスと深い繋がりのあるスウェーデン(フランスから王様を招聘した歴史、文化あり)にも伝わった。確かにフランスでは、野菜入れや花摘み籠、卵入れ、、、針金で作られた様々なFir de ferの古い暮らしの道具が今も見られます。
日本でも、竹細工のザルや籠、箒などを山盛り天秤棒にぶら下げ担いで売り歩く、髷頭の男性の古い写真を見た事があります。アジアの手近な材料=竹で作る道具、、、虫籠や鳥籠だってありました。しかし、Fil de ferのものには、鉛筆の一筆描きに似た自由な線の動きの面白さ、味わいがあります。そして、何より存在が軽やかで室内空間を邪魔しません。心惹かれる針金細工のものに出会うと幾つか求めました。決して価値ある、家宝になるようなものではなく、あくまで線や味わいが楽しめるモノです。
写真の上2つは真正のFil de fer で、次の花摘み籠と襟飾り用スタンド、台所道具はベル・エポック時代(1900年代初期、鍋敷きは中期)の機械工程が少し入った時代のものです。