昨日(11月27日)、友人と二人で街に出かけました。花市場を起点に、ギャラリー2軒を廻り、買い物もして、最後にお茶で〆る、、、そんなコースの久しぶりの楽しい半日でした。気が付けば、街中がセール日となるBlack Fridayで、加えて明後日は待降節=Advent(*)の最初の日曜日。コロナ禍で様々に規制が厳しいにも関わらず、人出も多く、街は既にX’マスの賑わいを見せていました。いくつかの街角にはモミの木のX’マスツリーの売り場が準備され、通りの頭上にはモミの枝と照明の花綱がトンネル状に下がり、ショップのウィンドウやドアは競うように、灯りやモミの枝で縁飾りされています(モミの枝は全て生で、灯りは電球色です)。
また、赤いサンタ帽をかぶった子供たちの姿もあちらこちらで見かけられ、高揚感が満載といった感じでした。京都でショップをオープンして以来、毎年、デンマークへの帰国はX’マス直前というパターンのため、こうしてX’マスの準備がすっかり整った、美しく活気ある街の様子を見るのは、心が浮き立つほど新鮮でした。他のキリスト教の国々(デンマークは97%がルーテル派のプロテスタントです)も大同小異だと思いますが、デンマークも小売業の売り上げは1年の30〜40%がこの時期に集中するため、商業的にも大切な時期です。
X’マス=降誕祭はイエス・キリストの誕生を祝う、世界中のキリスト教徒にとって、復活祭に次いで大切な行事です(今は、よほど敬虔な信者なら別ですが、実際にはX’マスの方が人々の暮らしに密着している感じです)。しかし、キリスト教が4世紀にローマ帝国の正式な宗教となって以来、キリストの教えがヨーロッパ諸国や北欧などに伝搬する(デンマークに伝わったのは8世紀)以前は、それぞれの国や地域で12月21日〜24日は冬至の「光のお祝い」でした。この日を境に陽が1日1日長くなっていく、「不滅の太陽が生まれる日」として喜び、祝いました(反対に1年で陽が1番長い6月20〜23日は夏至のミッド・サマーを祝います)。ストーンヘンジに代表される巨石遺跡群や日時計などによる太陽運行の観察から、冬至や夏至の日を知っていた人々が、古くから信仰し、祝って来た光の神話や伝説がX’マスの歴史の背景にあります。
北緯55度に位置するコペンハーゲン(樺太最北端より北、パリは樺太の南部です)の11月は大変暗く、12月は更に暗い月です。しかし、このお祝い行事があるお陰で、春までの長い冬が二分され、多くの人々が 「1年でこの時が最高!」と言えるほどの活力を得ています。私のデンマークへの帰国は毎年12月20日頃ですが、荷解きをして、まず、するのが家の中の飾り付け作業です。モミの木のツリーは間に合いませんが、長年、見つけては少しずつ求めたオーナメントで、半分北欧らしく、半分私流、また、X’マスを過ぎても飾っておけるようなスタイルです。人々はX’マスの飾り付けが出来上がると、お茶やランチや夕食に、
* 待降節=Advent : 12月24日より逆算して始まる4回の日曜日。一般家庭では友人や家族で、お菓子を焼いたり、オーナメントを作り室内を飾り付けたり、正に降誕日を待つ4回のお祝い。
写真説明:左上より時計回りに
1)“妖精の枝”と呼ばれるカールした柳の枝(ブロンズ色のペイントがしてあった枝を昔購入)を花瓶に入れて、現代のシルバー系オーナメントや、流れ星や星形の古いクッキー型、クリスタルパーツやボタンなどを吊るして、、、。妖精の枝は、X’マス前になるとスーパーの入り口に出回る人気の優れもの。
2)両開き扉の上部一列にぶら下げた新旧ミックスのオーナメント。奥の部屋のテーブル中央、古い中国の鉢に白のポインセチアを。天井にはデコレーションされたシャンデリアが、、、。
3)シャンデリアの12本のアームや出っ張りに、シルバー系のオーナメントやモールを吊るして、、、。シャンデリア:夫の実家から受け継いだもの、19世紀末、フランス。オーナメント:手作りや大量生産、新旧のミックス。
4)透明クリスタル花器に常緑の針葉樹の枝を入れ、オーナメントをぶら下げ、松笠を添えて。花器:バカラ、1930年代。右のキャンドル受けは古いシャンデリアのトップ部分、フランス、19世紀初期。
5)宿り木を木製の額縁にぶら下げて。常緑の宿り木は永遠の生命のシンボルでもあり、X’マスには外せない。額縁:フランス、19世紀中期。左のベルプル:ガラスビーズとウール糸で刺繍したもの、イギリス又はドイツ、19世紀中期。
6)居間の窓を飾る電飾。私の心を明るく灯してくれる。4)、5)の写真の緑の植物飾り以外は、X’マスを過ぎても飾っている。
2020年12月 ユキ・パリス
著書『ずっと もの探し』(文化出版局2011年発行)
http://books.bunka.ac.jp/np/book_mokuji.do?goods_id=5518